こんにちは!HELCON -Health Consult-では内科専門医の監修で健康や生活に役立つ情報をお送りしていきます。今日はこちらの話題についてお話しします。
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はじめに
食べられない原因は多岐にわたり、複数の原因が複合的に関わっている場合もあります。複数の精密検査を経てようやく原因の診断にたどり着くことも少なくありません。このページでは、比較的頻度の高い食欲不振の原因をわかりやすく解説します。なお、本記事は一般の方向けに作成しておりますが、実際の症状については医師に相談してください。
※このページは食べられないときにどのような原因が考えられるのかについて紹介しています。一般の方々の理解を促すために作成していますが、個々の病状については必ず医師に相談・確認するように心がけてください。
1. 感染症(風邪・尿路感染症など)
感染症は最も一般的な食欲不振の原因です。ウイルスや細菌、真菌(カビ)などが体内に侵入することで、発熱や寒気を伴い、食欲が低下します。一般に言われる風邪 (医学名では、ウイルス性上気道炎)でこういった経験をされた方は多い科と思います
軽症のウイルス性感染症では、食欲が下がっても日にちが過ぎれば自然に良くなることも多いです。一方で、高齢の方の発熱では尿路感染症(尿管や膀胱・前立腺などのお小水の通り道の感染症)など、細菌が原因になって感染症になってしまう場合も多く、このようなケースでは放っておくと細菌が血液の中に入って重症化してしまうと意識が混濁したり、呼吸が苦しくなったり、血圧が低下したりして命に関わります。
感染症が疑われるときにはできるだけ早い段階、必要に応じて繰り返し医師の診察を受けて、体のどこで感染が起こっているのか、どんな微生物が悪さをしているのか、患者側の要素(年齢や基礎疾患など)から見て重症化リスクはどの程度あるか、などについて調べてもらい、医学的な対応について適切な助言をもらうことが非常に大切です。
風邪 (ウイルス性上気道炎)や胃腸炎 (ウイルス性胃腸炎)ならクリニックや小規模な病院の外来でも診察してもらえることが多いです。ただし、初めは胃腸炎だと思っていたものが、詳しく診察すると実は虫垂炎や胆嚢炎だったということもあるので医師が診察の上で必要と判断すれば総合病院への受診を促す場合もあるかもしれません。
ウイルス性上気道炎などは、自然に良くなることが見込まれますので、特殊なウイルス感染症や重症化リスクになるような基礎疾患がある場合を除いて解熱鎮痛薬などの症状を和らげる薬剤で対症療法を行いながら様子を見ることが一般的です。一方で、細菌性感染の場合には抗生剤治療が必要になります。薬が効いてくれば少し遅れて食欲も回復してきます。
- 例: ウイルス性上気道炎(風邪)、尿路感染症、肺炎、ウイルス性胃腸炎など
- 主な症状: 発熱、悪寒、喉の痛み、下痢、嘔吐など
- 対策: 風邪などの軽症は対症療法で自然回復する場合が多いですが、高齢者や基礎疾患のある方は重症化のリスクや細菌感染症を合併している可能性があるため早めの医療機関受診が重要です。
2. 消化器疾患(胃腸炎・胆嚢炎・虫垂炎など)
お腹の臓器に異常があると、腹痛や下痢とともに食欲低下が起こります。胃腸炎と思っていたら実は虫垂炎や胆嚢炎が隠れていることもあるため、注意が必要です。
発熱、腹痛、下痢といった典型的な症状が揃っており、症状が軽い場合には胃腸炎として対症療法としても問題がないことも多いです。一方で、胃や腸だけでなく、肝臓や胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、虫垂、卵巣、子宮、それらを栄養する血管など多数の臓器が含まれるため、腹痛の症状が目立つ場合には特に虫垂炎や胆嚢炎など他の疾患が隠れていないかについても注意が必要です。
必要に応じて血液検査や超音波検査、内視鏡検査、造影CT検査などが必要になるので、診療所ではなく病院への受診が必要になることも多いです。
- 例: 胃腸炎、胆嚢炎、虫垂炎、肝炎、膵炎など
- 検査: 血液検査、超音波検査、内視鏡検査、造影CT検査など
- 対策: 胃腸炎などは対症療法ですが、重症の場合は総合病院への受診が必要です。
このほか、習慣的な便秘症も食欲不振(食事量低下)の原因になることがあります。3日以上排便がない状態が続く時や便が硬くて排泄が難しい場合には緩下剤の使用が勧められます。
3. 薬の副作用
特に高齢者や多剤服用者は、薬の副作用で食欲が低下することがあります。逆に、自己判断で薬を中断して病状が悪化するケースも見られます。
高齢かつ常用薬が多い方で特に注意が必要でしょう。薬の種類や最近の処方内容の変更について確認を行い、疑わしい場合には被疑薬の減量や中止を医師と相談することが重要です。逆に自己判断での定期内服の中断もリスクを伴うということを知っておいていただければと思います。薬関係で疑問があれば処方してくれた医師とよく話し合うことが大切です。
- 例: 降圧剤、抗生剤、抗がん剤、向精神薬など
- 対策: 薬の変更や減量は必ず医師と相談のうえで行いましょう。
4. 悪性腫瘍(がん)
がんが進行すると、体重減少や食欲不振が現れることがあります。早期発見のため、特に高齢で悪性腫瘍の治療歴のある方、喫煙歴の長い方、がん家系の方、ここ数年がん検診を受けていない方、この数か月で体重が急に減った方は注意が必要です。
詳しい検査が必要なので総合病院やがんの専門病院を受診することをお勧めします。早期発見のためにもがん検診を定期的に受けられることをお勧めします。
- 注意が必要な方: がん治療歴のある方、喫煙歴の長い方、がん家系の方、急激な体重減少がある方
- 対策: 定期的ながん検診や、がん専門病院での精密検査を受けましょう。
5. 味覚障害
味が感じにくくなることで、食事への興味が失われ、食欲低下につながります。
亜鉛欠乏症やコロナ感染後、抗癌剤治療中などに認めることがあります。亜鉛欠乏については、2週間から1カ月程度かけて亜鉛製剤を内服することで改善を認めることもありますが、抗癌剤治療の副作用の場合には症状の程度次第で薬剤の減量が必要な場合もあります。口内炎などを併発している場合には、合わせて治療を行います。
- 原因例: 亜鉛欠乏症、抗がん剤の副作用、新型コロナウイルス感染後など
- 対策: 亜鉛製剤の服用や、原因となる薬剤の調整を行います。
6. 歯や義歯のトラブル
歯の痛みや入れ歯の不具合は、噛むことが困難になり、食欲低下の原因となります。
- 対策: 早めに歯科医に相談し、義歯の調整や虫歯の治療を行いましょう。
7. 飲み込む力の低下(嚥下障害)
加齢や神経疾患により、飲み込む力が低下することで食事が困難になります。
低栄養が続くとさらに筋力が低下し負のスパイラルに陥る恐れがあります。
パーキンソン病や筋炎などでは、薬剤治療で改善を認めることもあります。一方で、長期の経過の中で緩徐に機能が低下していっている場合には、医療者と患者・家族の間で話し合い、食事形態の工夫や栄養剤の利用、嚥下リハビリテーション、胃瘻などの処置を検討していくことになります。
- 原因例: 加齢、脳卒中、パーキンソン病、神経筋疾患など
- 対策: 嚥下リハビリテーションや食事形態の工夫が有効です。
8. 糖尿病の悪化
糖尿病が悪化すると、体の代謝異常が進行し、食欲不振が現れます。重症化すると命に関わる状態になることがあります。
インスリンが打てていなかったり、感染症などで急に体調が悪くなった時、糖尿病の悪化に関与する薬剤(ステロイドや一部の抗癌剤(免疫チェックポイント阻害薬やエベロリムス等))の使用中などでは糖尿病が急に悪化することがあるので特に注意が必要です。
重症化した場合の分類は大まかにいって2つのタイプ(糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群)がありますが、いずれも致命的になりうる、緊急の治療が必要な状態です。すみやかに医療機関を受診しましょう。
- 主な重症型: 糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群
- 対策: 急激な高血糖や長期の高血糖、口渇・体重減少・多尿を伴う場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
9. 腎不全・肝不全
腎臓や肝臓は体内の老廃物を排出する役割がありますが、これらの機能が低下すると毒素が体内に蓄積され、食欲不振が生じます。
かかりつけの医師に相談した上で、必要に応じて腎臓専門医や肝臓専門医への紹介受診を勧められることがあります。
- 対策: 腎臓専門医や肝臓専門医による適切な治療を受けましょう。
10. ミネラルバランス異常
体内のナトリウムやカルシウムの異常は、吐き気や食欲不振を引き起こすことがあります。ミネラルのバランス異常を引き起こす疾患への治療介入と並行してミネラルのバランスを正常化するための薬剤治療も行う必要があります。
- 原因例: ホルモン異常、腎疾患、副甲状腺疾患など
- 対策: 血液検査でミネラルバランスを確認し、必要な薬剤治療を受けましょう。
他にも、妊娠関連の嘔気(つわりや妊娠悪阻)、甲状腺疾患・副腎疾患などのホルモンバランスの異常や心疾患、脳神経疾患や筋疾患、神経性食思(欲)不振症、精神疾患などが原因になり得ます。
おわりに
今回は食欲不振の主な原因を解説しました。食欲不振はさまざまな疾患のサインであるため、疾患ごとに治療方法も変わってきます。どのようなケースでどんな検査が必要になるかについては医療を受ける側がすべてを完璧に理解する必要はあまりなく、大まかなことを理解してイメージを持ってもらった上で診察を受ける医師や医療スタッフと話して気になることがあればその都度相談するようにしてもらうのが良いと思います。医師に相談する際に、この記事が読者の皆様の参考になれば嬉しいです。
次回の記事では、**「食欲不振の原因の調べ方」**について詳しく解説する予定です。食欲不振が起こった時にどのような順番で原因を調べていくのが良いかについてお伝えしようと思います。
しばしお待ちください。ぜひお楽しみに!
以下は、関連ページのリンクです。
▶ ~栄養失調になるとどうなる? -① 食欲がない!食べられない!体に及ぼす影響と注意点- ~
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